「児童虐待」の問題は、テレビ・新聞などで、頻繁に児童虐待事件が報道されています。しかし、報道されている虐待の事例は、子どもが死に至るような重度のものばかりです。

 もともと子どもの福祉を守る法律として、18歳までの児童を対象に「児童福祉法」がありましたが、これはあまり有効に行使されていませんでした。日本では1990年代以降、子ども虐待が社会問題化し、94年「子どもの権利条約」の批准がさらに社会問題化の原動力となりました。

 そして、2000年11月「児童虐待の防止等に関する法律」が成立・施行されました。この立法によって、初めて「児童虐待の定義」が定められました。

子ども虐待とは

「児童虐待の定義」としては、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の四種類とされています。

身体的虐待

子どもを叩いたり、けったりなど、暴力で身体に傷を与える、または傷を与える恐れのある行為。

ネグレクト

適切な衣食住の世話をしない、家に閉じ込める、病気でも医者に見せないなど、養育拒否や子どもを放置すること。家族や第三者の虐待を見すごすこと。

心理的虐待

子どもの存在を無視する、罵声を浴びせおびえさせる、無理じいするなど、精神的に苦痛を与えたり、自尊心を傷つけたりして、心理的外傷を与える言動を行うこと。

性的虐待

子どもに性的刺激や行為をさせること。性的な刺激を与えたり、性的暴行や強要、ポルノ撮影などの行為。

しかし、上記のように「児童虐待の定義」があっても、まだ「虐待としつけの違いについて」の問いが残ります。虐待としつけの違いには線引きできないグレーゾーンがあります。しかしこの問題は、あくまで子どもの側に立って判断し捉えていかなければならないでしょう。

子ども虐待の現状

厚生労働省の資料にみる児童虐待の現状

児童相談所での児童虐待相談対応件数

全国の児童相談所(児相)が平成26年度に対応した「児童虐待」の件数は、88,931件で、平成27年度に対応した「児童虐待」の件数は、103,286件と過去最高の件数を更新し、年々増加の一途を辿っています。

上記の数字は、あくまでも児童相談所が受け付けた件数で、氷山の一角と思われます。事態は深刻の度合いを深めているのです。もはや全ての国民が看過できない社会問題となっており、地域を挙げて児童虐待を予防する官民一体の取り組みが必要とされています。

また平成28年度中に、全国210か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は122,578件(速報値)で、過去最多を更新しました。

児童虐待の現状と対応

厚生労働省では「児童虐待の現状とこれに対する取組」として以下のように説明しています。

児童虐待への対応については、従来より制度改正や関係機関の体制強化などにより、その充実が図られてきました。しかし、深刻な児童虐待事件が後を絶たず、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加を続けており、依然として社会全体で取り組むべき重要な課題となっています。
厚生労働省では、児童虐待の防止に向け、(1)児童虐待の発生予防、(2)早期発見・早期対応、(3)子どもの保護・支援、保護者支援の取組を進めています。

【資料PDF】児童虐待の現状とこれに対する取組について[223KB]

児童虐待の背景は複雑で多岐に渡ってるので、福祉関係だけではなく、医療・保健・教育・警察さらに地域住民などを含めた、地域社会での協力体制による児童虐待防止対策が必要とされています。

児童虐待対策の具体的な取り組み

厚生労働省による行政説明資料より

発生予防

一般子育て支援(孤立化防止)
・つどいの広場の拡充 ・地域子育て支援センターの拡充
虐待ハイリスクの家庭の把握・リスク低減(母子保護活動)
・健診に心理相談員、保育士の配置 ・周産期医療施設との連携
育児支援のための家庭訪問
・自ら訴え出ないが過重な育児負担のある家庭を訪問し、育児支援を行う事業
虐待問題への理解の醸成
・中・高校生の乳幼児ふれあい体験 ・児童虐待防止推進月間の推進

早期発見・早期対応

市町村による相談援助の実施
虐待防止ネットワークの法制化
児童相談所の体制・機能強化
・児童福祉司の配置基準の見直し ・弁護士、精神科医等との連携 ・家庭裁判所の関与の強化
児童相談所職員の資格、研修の充実等
・専門研修の実施 ・児童相談所長の研修義務化 ・児童福祉司の任用要件の見直し(実務経験を要求)

保護・支援

児童福祉施設等の機能システムの充実
・地域小規模児童養護施設の拡充 ・心理療法担当職員の配置 ・個別対応職員の配置 ・児童福祉施設の年齢要件見直し ・里親支援の拡充
施設退所後の支援の充実
・施設退所児童に生活福祉資金貸付 ・雇用促進住宅の入所条件緩和 ・施設の業務として、退所児童に対する相談援助を追加 ・年長児童を対象とする自立支援ホームの業務に「就業の支援」を明記
保護者への指導・支援
・弁護士、精神科医等との連携 ・家庭裁判所の関与の強化 ・保護者へのカウンセリングに係る知見の集積

児童虐待を早期に防ぐ必要性

虐待の世代間伝達

虐待は、親から子、そしてその子どもの子へと虐待の連鎖が続いてしまいます。親は自分がされてきた養育方法しか知らず、自分が親から受けてきたやり方が虐待であっても、同じやり方で子どもに養育を行おうとしてしまいます。
保護者自身も虐待を受けて育ったので、親から愛情をかけてもらったことがなく、自分も親からされたように接してしまい、その結果、虐待となってしまうのです。このような虐待の連鎖を無くすためには、児童虐待を早期に発見し、次の世代に虐待が伝達しないように防ぐことが重要となります。

子ども虐待防止サポーター検定について

増え続ける「子どもの虐待問題」に対応する新資格

「子ども虐待」の防止には「児童虐待防止法令」や虐待の背景とそのメカニズムなど、様々な専門知識が必要です。

「子ども虐待防止サポーター検定」は、子どもの虐待に関する知識や情報をもとに、虐待されている子どもを発見した場合の対処の仕方や、虐待を防止するために必要な知識などを学び、大切な子どもの命や人生を守ることができる人財を育成するための検定資格です。

検定受講の対象者

子どもを持つすべての親、子育て支援や子どもの教育に携わっている方、社会福祉事務所職員、自治体職員、保健所職員、保健センター職員、子育てセンター職員、民生委員、児童委員、保育所職員、保母、幼稚園職員、医療関係者、学校職員、警察官、地域リーダー、NPO法人職員、自治会役員、子どもに関わる事業者、学習塾経営者など

資格取得について

「子ども虐待防止サポーター検定」公式テキストである書籍を購入頂いた方、あるいは、eラーニング講座で学習をされた方を対象に、各地(東京・大阪など主要都市)で開催される検定試験を受け、一定の成績をおさめられた方に「子ども虐待防止サポーター」の資格を授与いたします。

子ども虐待防止サポーターには何ができる?

子ども虐待防止サポーターは、何か特別なことをする必要はありません。「虐待」を見たり聞いたり「虐待かも」と感じたとき、また子育てに悩んだとき、「子ども虐待」についての知識や理解をもとに、通告・相談を通して地域と連携して、大切な子どもたちの命や人生を守っていくことがミッションです。

子ども虐待防止サポーターは、そのミッションを通して地域や職場などでもできることがあると思います。その一例を以下にご紹介します。

地域で…

例えば近所で、子どもの泣き声がいつまでも続いている。「虐待かどうかわからない」というケースも少なくありません。しかし、迷うということは、何かしら心配を感じたと言うことです。

子ども虐待の防止は、虐待を行っていないかと見張ることではありません。でも、もし虐待なら…。そんな時には、まず「通告」が必要でしょう。行政による支援は、通告があって始めてスタートするので、「通告の目安」や、「通告の流れ」を知っておくことも大事です。

家庭で…(育児中のあなたも)

子育てしながら家事をするのは、とても大変なことです。強い子育て不安、夫婦の不仲、働きたいけど働けないなど、不安やストレスの爆発によって虐待に至ってしまうケースは多くあります。

虐待に至る背景や、虐待を知った時の対応方法などの知識は、もしあなたの家族や友人、そしてあなた自身がそんな状況に陥った時、虐待を受けた子どものママやパパの気持ちへ寄り添えることができ、また、あなた自身の虐待への理解や安心へ大きな助けになることでしょう。

子どもたちを守り育める社会へ…

一般社団法人シニア福祉相談士検定協会では、『地域から不幸な子どもを無くしたい…』との思いから「子ども虐待防止サポーター検定」を創設しました。この検定を通して、多くの「子どもを守る人財」の輩出を目指しています。そして、ここで得た知識が皆さん自身の生活に新たな発見や展開をもたらすことを願っています。